暗い暗い丸天井には 偽物の星達。 [神]が続ける。 「お前だってそうだろ。 俺等みてーになるってー権利を手に入れる為に 友達も 好きだった奴も 捨てただろ それと同じさ」 苦い顔をするアズマ。 「俺等も同じだ。 大げさに云うと 命」 「…命?」 「そ 命。 俺が気に入った奴の命を救えるか って事は 手に入れるかって事で そいつの命を救うため 手に入れる為に 敵になる命を捨てる 例え どれだけの命が失われようと」 どこか寂しげに語る[神]は 紅い眼を揺らしてアズマを見据える。 顔を上げ きちっ と睨み返すアズマ。 だが 喉まで出てくる単語は 言葉にはならず。 ただ 時間が流れる。 [神]が告げる。 「手に入れる為に 捨てるんだ」 ゆっくりと 云い聞かせる様に。 ただ 時間が流れる。 「だけど 貴方のやり方は 酷すぎる」 何度か口を開閉させ それから か細く そして 確実に単語を並べるアズマ。 ただ 時間が流れる。 「そうかい。 …けけっ お前はよぉ 優しすぎんだ。 だからいつまで経っても慣れねーのさ。 そうだな あんたには 向いてないのかもしれないな」 さっぱりとした笑顔で告げる[神]。 再び俯いた黒髪が揺れる。 「…。 [イースタン]」 「…………は」 仕事での名で呼ばれ 顔を上げるアズマ。 「仕事だ。 お前も知ってるだろうけど [ルーン]の人間を使って 幾つもの人体実験を繰り返してる組織」 「…。 [ボルバンガー] ですか?」 「ああ [邪悪の源] な。 あいつら自身は [マグ・メル] と呼んでいるが 意味が正反対だな。 [ボルバンガー] と」 何かを思い出す様に眼を上げる。 口元に手を持っていって考える [神]。 微妙な間。 そして 手を元に戻して 云う。 「あー [幸せ土地] だったか そんな意味だ。 何を指してんだか やってることを考えると やれやれ だな」 「はあ」 「で そいつらをぶっ飛ばして欲しい」 嫌だろうケド そう付け足して [神]は口を閉じた。 アズマは 何も云わない。 ただ 沈黙を守ってるだけ。 「方法は 何でも良い。 だが 彼女に 仇をとらせたいんだ」 「…彼女?」 「ああ 俺の気にっている人間の内の一人だった奴 そいつの妹だ」 左手を 一振り。 そこに浮かび出たのは 黒髪の少女が 二人。 一人は 二つに分けたおさげ。 もう一人は 髪を高く結い上げている。 ともに 紅い眼。 「こっちの子 おさげの子が殺された。 彼女は オキの親友だった」 語る[神]は どこか懐かしげな表情。 アズマは知っていた。 [神]にとって [ルーン]の人間程 愛しい人種はない。 それに ときどき降りていくことも。 「オキの兄も気に入っていたが オキも俺が一番気に入ってる奴の一人だ。 何でって [ルーン]一の踊り子になる奴だし ちょっと辛い思いをさせたからな。 だから コイツに仇をうたせてやりたい。」 そんなんで 罪の贖いが出来るとは思わないが。 呟いた声は アズマには聞こえなかったようだ。 不信な眼つきで アズマがぼそりと呟く。 「…。 一人だけ特別扱いするのは [神]として どうかと思いますが」 「良いんだ 良いんだ そんな事気にするなっ」 なんてわがままな[神]だ。 アズマは軽く溜息をついた。 何時の間にか さっきまで感じていた苦いものは消えている。 そのことに気付かずに 話進める。 「それだけ かな。 後は あんたに任せる。 使いたい奴はいくら使っても良い。 俺が許した って伝えとくから」 「はい」 [神]の表情が改まった。 「それでは 行け [イースタン]。 我等[神]の僕 [天使/ウォッチャー]よ」 一礼するアズマ。 ふっ と 彼の影が揺れたかと思うと 瞬き一瞬 彼は元から居なかったように 掻き消えていた。 完全に居なくなったことを感じとり ぽつりぽつり と呟く[神]。 「それが 俺等のやり方さ。 勝利を手に入れる為には いくらでも 要らない命を捨てるんだ。 欲しいもんを手に入れる為に いくらでも 嘘をつくんだ。 お前にゃあ 辛いこったろうな。 要らなくたって 家族が居て 友達が居て 哀しむ奴が居るって 知ってるからな。 正直な奴だし」 ふう と 溜息をついて左手を振る。 今まで浮いていたその画像が掻き消える。 浮かない顔で しばらく球体に腰掛けていたが うーん と後ろに倒れると同時に 球体が閉じる。 何事もなかったかのように 静まり返る部屋。 暗い暗い丸天井には 偽物の星達。 大きな大きな丸天井 溢れそうな星達。 その下に 小さなクレーターの様に広がる穴。 中心には シャボン玉の様な球体が浮いている。 だが 薄い青が張って 中が見えそうに無い。 [神]は 何を思っているのだろう。 [イースタン]は 何を思っているのだろう。 彼等の仕事は 産み落とされた罪の贖い。 これからも これかも ずっと ずっと。 |
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